short story 懺悔するアンパンマン
アンパンマンは悔やんでいた。なぜ私はすべての人を救うことはできないのか。バイキンマンは着々と勢力を増大させていき、今や、かつてのローマ帝国にも引けを取らないほどだった。自惚れていたのだ。私はいつまでも拳一つで勝利を手にできると勘違いしていた。そのために私は強くなることをおろそかにしていたのだ。
今宵も奴の地の宴が始まってしまう。どれだけの犠牲が出るだろうか...私はどれほどの犠牲を出すことでその日をしのぐことができるのだろうか...
私は懺悔した。許しを請う。しかし私の祈りも届かず、今宵も狂乱の宴が幕を開ける。
強くならなければならない。この世界を救うために。これ以上の犠牲を出さないために。世界は誰に対しても都合の悪いものだ。世界は正義に加担したりなどしない。かと言って世界は悪に加担したりなども決してしない。
ならば...私にできることは...
「限界を超えなければならない」
顔を引きちぎる。ブチブチと聞くに堪えない音を立てながら自身に襲い掛かる苦しみも恐れずに顔を引きちぎる。あたりにはあんこがドボドボと汚らしくまき散らされている。
「これが...導き出した答え...!」
すでに私は誰にも合わせる顔がないほど醜い姿になっていた。
「宴はまだこれからだよ」
バイキンマンは何も語らずうっすらと顔に笑顔を浮かべていた。
私は先ほど引きちぎった顔を地面に落とす。”それ”は地面に触れると異形のモノに姿を変えていく。
「ザンギエフ...」
懺悔から生まれた無数の怪物ザンギエフは黒い太陽を包み込むかのように飛び掛かる。
「もう終わりにしよう...こんな世界。」
異界の扉が開かれザンギエフは黒い太陽を扉の中へと押し込む。
扉が閉まろうとしている中、私も扉に向けて歩みを進める。
「...」
もう語ることはない。でも最後にこれだけは。
「ありがとう」
その言葉を残してアンパンマンも扉の中へと姿を消していった。
次回 アンパンマン、バイキンマン ストリートファイター参戦